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                     街路樹からまちづくりを考える


  高山佳己       
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2003年8月3日の「TOSSサマーセミナー2003」の「石黒修・千葉幹雄授業道場」で行った模擬授業の発問・指示・説明を公開。

1 街路樹のはたらき

指示1  スクリーンをご覧なさい。

□日本の有名な街路樹10枚の写真を次々と提示

発問1 これらの写真を見て,気がついたこと,分かったこと,思ったこと,どんなささいなことでもいいですから言ってください。 

※列指名※実際に子どもに授業するときは必ずノートに書かせてから発表させるようにする。

発問2 街路樹は何のためにあると思いますか。ノートにできるだけたくさん箇条書きに書いてごらんなさい。 

※列指名

□街路樹のはたらき提示

説明 街路樹のはたらき。
・まちを美しくする
・まちに季節の変化を知らせる
・交通安全になる
・騒音を防ぐ
・夏の暑い日ざしをさえぎる
・車の排気ガスを吸収する
・まちの目印となり、道に迷うのを防ぐ
・野鳥や昆虫を呼び集める
・まちの人々の心に安らぎと潤いをあたえる 

2 防災機能としての街路樹のはたらき

発問3 日本の街路樹で一番多い木は,何という木でしょう。ノートにズバリ書きなさい。  

※数名指名

□日本の街路樹ベスト5の提示

説明 日本の街路樹ベスト5。
第5位 プラタナス
第4位 トウカエデ
第3位 ケヤキ
第2位 サクラ
第1位 イチョウ 552407本あります。  

発問4 どうしてイチョウの木が一番多いのですか。  

※数名指名

□神戸市大国公園の樹木の写真提示

説明 ここは神戸市長田区大国公園。この公園にあるクスノキとイチョウの木。 

□阪神淡路大震災の写真提示

説明 1995年1月17日。阪神淡路大震災による猛烈な炎はこの公園にも迫ってきました。 

□炎や火の粉をくい止める樹木の写真提示

説明 公園の隣に住んでいた福田道夫さん。
「くやしいけど、うちが焼けた最後の端。木や公園、道路が延焼を食い止めてくれた。家が残った人たちは皆、緑に感謝していますよ」
大国公園を調査した神戸大学の佐々木葉二さん。
「水分を含んだ樹木が「水の壁」になった上,オープンスペースが延焼をくい止めた」  

□神戸市長田区の「大国公園」の震災碑の写真提示

説明 これは大国公園にある震災の碑。ここにはこう記されています。
「当公園は、震災時に延焼を防ぐとともに救援活動の拠点として活用され、私たちに公園や樹木が持つ防災的な役割を再認識させました」  

□樹木がある場合とない場合のとでの火災の伝わり方の比較の写真提示

説明 火災時の樹木の役割を調べた大規模な野外実験も行われました。
2分30秒後。
8分後。
11分後。

□関東大震災の湯島聖堂の焼けイチョウ,浅草寺の焼けイチョウ,江島杉山神社焼けイチョウの写真を次々と提示

説明 現在も残る関東大震災の湯島聖堂の焼けイチョウ。浅草寺の焼けイチョウ。江島杉山神社焼けイチョウ。
「火を受けた浅草寺の大イチョウがね,水を吹いて何人もの人が助かったのよ」
これは生き延びた人の証言です。

発問5 ここまで聞いてどんな感想を持ちましたか。  

提案 みなさんの町には,どこにどんな街路樹がありますか。
その街路樹はどうしてそこにあるのでしょうか。
さあ,みんなで街路樹探検に出かけましょう。  

※ここまで「TOSSサマーセミナー2003」の「石黒修・千葉幹雄授業道場」で行った模擬授業用です。
45分で行う場合は,上記「提案」をカットして,以下の「3 浜松の街路樹」に進みます。まちづくり教育ですから,授業される方は,是非それぞれのまちの被災街路樹を取り上げていくとよいと思います。

3 浜松の街路樹

□戦災からよみがえった浜松市のプラタナスの木の写真提示

説明 浜松にもたくさんの街路樹があります。浜松駅前にあるプラタナスの木。この木にもある物語があります。

「私は,プラタナスという木。昭和4年に浜松駅の近くの鍛冶町にある広い道に45本の仲間といっしょに街路樹としてやってきました。いごこちのよい浜松を気に入り,みんなもかわいがってくれたのですくすくと大きくなりました。夏の暑い日には,みんなが私の葉陰に集まって,汗をぬぐっていたものです。
 
 忘れもしません。昭和20年6月18日。私のまわりに爆弾が降ってきてあたり一面火の海になりました。燃え尽きて崩れ落ちる家々,炎の中で逃げまどう人々,本当に地獄の1日でした。この日私の仲間で生き残ったのはたったの3本でした。」 

□戦災にあった浜松市のプラタナスの木の写真提示

説明 「私は,あの浜松大空襲でひどいやけどをしましたが,人々の手あつい看護でやけどはなおり,昭和39年には「市民の木」と名前を付けてもらいました。」

□健やかに成長するプラタナスの2枚の写真提示

「私の前を通る子どもたちの笑い声の中に,みどりの心が育ってくれることを祈っています。」 

提案 浜松市にはどこにどんな街路樹があるのでしょうか。
また,どうしてそれが植えられたのでしょうか。
あのアクト通りにはどんな街路樹がこれから植えられるのでしょうか。 
これから街路樹探検をしていきましょう。 

※第1回まちづくり教育シンポジウムIN浜松で向山洋一先生が御講演された中で,阪神淡路大震災の例を出し「防災・安全の面からのまちづくりを!」と提言されたことをヒントに授業を組み立てました。

【参考HP】
「神戸新聞 長期連載「復興へ」
http://www.kobe-np.co.jp/sinsai/fukkou/fukkou_index.html
「読売新聞大阪本社街路樹 神戸の被災地で進む“緑の復興” 防災機能を再認識 」
http://www.yomiuri-you.com/you_c/ecology/elife/e000427.shtml
「震災記録写真 大国公園」       
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/photo/oogimoto/place/5030502500.html
【参考文献】
「街路樹は『町の顔』」(有田和正 授業のネタ教材開発 NO159)
「よみがえった黒こげのイチョウ」(唐沢孝一 大日本図書)
「街路樹と並木」(桜井廉 小学館)
「『街路樹』デザイン新時代」(渡辺達三 裳華房)
「街かどツリー・ウォッチング」(菅原久夫 静岡新聞社)
「街路樹」(山本紀久 技報堂出版)
「Phoenix Hyogo 2002」
【現地調査】
2003/1/23 大国公園,人と防災未来センター